海と劇場、ときどき本棚

2018年の7月に爆誕した何をするのかを模索しつづける会社「ひとにまかせて」代表のブログです

何者でもない人、どこでもない場所、


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初詣で早稲田にある穴八幡宮に行って、ついでにある場所を訪れました。

大隈講堂裏部室。通称「隈裏」です。

 

早稲田大学の大隈講堂と言えば名前を聞いたことがある人も多いと思いますが、その裏手にある「隈裏」を知っている人はそう多くはないでしょう。
6つのサークルの部室と2つの劇団のアトリエ、そしてぼくが所属していた舞台美術研究会のアトリエがあります。
ぼくが隈裏で過ごした日々のことは以前書いたこちらの記事をごらんください。

apartment-home.net

 

足を運んだのは、昨年末に劇作家の鴻上尚史さんのいくつかのツイートを見たからです。

 

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隈裏入り口 以前は中の見えない黒い鉄扉だったのでそのころよりはオープンな雰囲気です

大学の構内ですがどことも繋がっていなくて、知らない人は足を踏み入れない。

そもそも学生にすら存在をあまり知られていない。

街の真ん中にあるのに別世界のような不思議な場所です。

 

とはいえ、大学当局としてはあまりありがたくない場所なのも事実。

隈裏は24時間出入り自由だし、部室棟も施錠されたりはしません。

今どきの大学としてはありえないような自由な場所なのです。

いまある部室はちょうど30年前、ぼくが在学中に建て替えられたものですが、そのときも建て替えにかこつけて管理を強めようとされました。

それをぼくの先輩方が大学と粘り強く交渉してもともとの条件の維持を勝ち取りました。

 

それから30年。

少しずつ規制は厳しくなっているみたいです。

テント公演が禁止されたことはぼくも知りませんでした。
(その規制の元になったある事件のことは聞いてましたが…)

それでも、久しぶりに訪れてみるとまだまだ隈裏は自由な場所で。

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以前は演劇研究会がテント公演を行っていた広場 いまはガラクタ置き場?

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劇団木霊(こだま)のアトリエ 30年前に建て替えを拒否した

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舞台美術研究会アトリエ

ここにいたのはほんの2年半。

なのにいまでも折に触れて思い出す。

あのころはまだ10代で、何者でもなくて。
そんなまだ何者でもない人々が集まり散っていくような場所だから、あんなに透き通っているんだろうか。
猥雑なのに空っぽで、日常の地続きではないようなどこでもない奇跡の場所。
まだ何者でもない時間をこんな素敵な場所で過ごしていたって、いま思えばとても幸運。

 

いつかそのうち、この場所も姿を変えるのだろう。

それはそれで仕方のないこと。

だから、ここで見た光、ここで感じた風、ここで向き合った闇。

この奇跡の場所を忘れない。

どんなに遠くまで進んでいったとしても。