舞台照明と一口にいっても、そのなかでもジャンルごとに仕事の内容ややり方は違っています。
演劇、コンサート、ミュージカル、クラシックバレエ、オペラ、演歌、コンテンポラリーダンス、日舞、などなど……。
同じピアニストでも、ジャズとかクラシックとかロックとか専門がいろいろある感じです。
とはいえ元々の技術があれば専門以外のジャンルでもそれなりにな通用しますが、ジャンル特有のやり方とかお約束があるので、スムーズにお仕事がいかないことも多いのです。
ぼくのいまの専門はお芝居。
その周辺のミュージカルとかコンテンポラリーダンスも守備範囲です。
若い頃はコンサートのお仕事も結構引き受けていたので、東京ドームとか武道館とかにしょっちゅう行っていた時期もありました。
ある時期からは消耗が激しいので受けないようにしていたらオファーもこなくなりましたが。
今日まで関わっていたのはクラシック・バレエ。
元々そんなに興味があったわけでもないし、いまでもそれほど好きではありません。
クラシック・バレエや日舞はある意味では決まり物で、この演目だとこういう舞台装置でこういう照明で、こんな感じで踊るというのは決まってます。
そこを外さないように照明をデザインしていくのですが、そういう決めごとを再現することがあまり得意ではないのです。
なんですがある時期に、たまたまぼくによく仕事を回してくださっていた会社がバレエの仕事を持っていたので、自分の好みとは別にバレエのお仕事に関わる機会がたくさんありました。
そのころの経験があるので、バレエに詳しい人みたいな感じでいまの会社の呼んでもらったりしています。
別にバレエが好きではないので断ってもいいのですが、若い頃にある照明会社のし野鳥さんに言われた、
「自分が好きなことを仕事にするのではなくて、自分が出会った仕事を好きになりなさい」
って言葉がいまでも心に残ってたりします。
好きな劇団やアーティストがあって、それに関わる仕事がしたいと思ってこの業界に入る人も多いし、別に悪いことでもなんでもないのです。
ただ、好きな人たちと仕事で関われる確証はないし、スタッフなんて様々な理由で変えられちゃうこともよくあるし。
好きな人と仕事をすることだけを目指すと長く続けられない。
だからご縁ができた仕事や人を大切にしなさいって話です。
おかげさまでというか、仕事をキッカケに好きになったこともたくさんあって、自分が出会った仕事を好きになろうとしたおかげで世界はとてつもなく広がりました。
多分、ひとつの場所を深掘りするよりも、広く浅くいろいろなものを感じるほうが楽しい人なんです。
だから今日も、クラシック・バレエは好きではないけど楽しい。