海と劇場、ときどき本棚

2018年の7月に爆誕した何をするのかを模索しつづける会社「ひとにまかせて」代表のブログです

ビジュアルと時間を操る仕事

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「何やってる人か説明しにくい」と言われたぼくですが、せめて舞台照明家とはどういう仕事なのかは説明できるようになりたいなあって思ってます。

これはこれでなかなかめんどくさいのですが。

先日、舞台業界ではない人たちと話していて、
「映画のゴッドファーザーではわざと真上から照明を当てて、人の目元を影にしたんですよね」って言われました。

初耳だったので調べてみたらwikipediaにも出てるくらい映画関係では有名なエピソードみたいでした。なるほどー。

これ以降、映画の世界ではこうした効果を狙ったライティングが流行ったとも。

 

ゴッドファーザーについては知りませんでしたが、外国映画だとこうした人の表情は見づらくなっても印象的なライティングはよくあるなあと思っていました。

日本の映画だとコントラストがあまり強くなくて、俳優さんの表情が見やすいライティングが多いなあとも思っていたので、そういう話をしてみたところ、その場にいた人には割と納得してもらえました。

そういう効果はいまの舞台照明でも同じように使われています。

 

照明にはいくつかの要素があります。

光の明るさ。

色。

方向性。

ゴッドファーザーはそのなかの方向性で表現するお話でした。

人に対してどういう方向から光が当たるかで、まるで印象が違って見えます。

もちろん色や明るさによっても雰囲気は変わります。

光源も1ヶ所ではなくいろいろな方向から光を当てていきます。

そしてそれぞれが違う色と明るさ。

シーンごとにそのバランスをどう変えていって、舞台の印象を変えていくのか。

何をどう見せるか。

もしくは何を見せないか。

作品を客席に届けるにはどうするのがベストなのか。

それを考えるのが照明デザインです。

 

なかなか存在を知られていない舞台照明家ですが、最近めずらしくネットの記事になっていました。

吉井澄雄さんは現代の舞台照明の礎を築いた方。

昨年、自伝的な本が出版されたのでそれにまつわる記事でした。

 

記事のなかで吉井さんのこんな言葉が紹介されています。

「舞台上に流れる演劇の時間をコントロールするのが照明です。これは舞台装置や衣装にはもちえない、舞台照明だけに許された特権です」

 

さすが、ぼくがずっと意識していてうまく言語化できなかったことを過不足なくキッチリと説明してくださるお言葉です。

照明の表現によって、作品が観客に届きやすくするにはどうすればいいのか。

役者が魅力的に見えためにどうするのか。

 そんなことを考えながら照明をデザインしていきますが、それぞれのシーンの見え方だけではなくて、作中の時間軸のなかで舞台をどう見せていくのかということが一番大切。

ぼくはそう思います。

ビジュアルと時間の2つの要素を使って舞台を彩る。

それが舞台照明家という仕事じゃないかなあと。

ほかにもいろいろと書いてみたいことがあるのですが、それはまた次の機会に。