昨日までで、照明デザインをやらせていただいた公演がひとつ終わりました。
デザイナーでもオペレーターでも、そして期間が長くても短くても、立ち上げから本番に関わっていた作品が終わると、魂が抜けたみたいになります。
ここで抜けたままにしておくとリスタートに時間がかかってしまうので、心のコンデイションを落としすぎないように気をつけないとなんですが、意外に難しいんです。
昨日までやっていたお芝居はサン=テグジュペリの「星の王子さま」でした。
なので劇中に砂漠のシーンが出てきます。
ということで、照明で砂漠っぽいシーンを作らないといけないのですが……砂漠っていったことない。
まあ行ったことや見たことのない場所や景色を見せなくてはいけないのはよくあることですが。
大学時代に同世代の人たちとお芝居を作るなかでよくリクエストされたのは「ディスコみたいな照明」
大学生が書く作品なので、自分たちにとって身近な場所がよく出てくるのでしょう。
でもぼくは行ったことありませんでした。
なので想像でディスコっぽいシーンを作ってましたが、一度もイメージが違うと言われたことはなかったので、まああれで悪くはなかったのかな。
タイムボカンシリーズの主題歌などを手がけるシンガーソングライターの山本正之さんに「輝けライトマン」という曲があります。
当時、山本さんのライブの照明を担当していたSPSという会社と全ての照明スタッフを称える歌です。
歌詞のリンクを貼っておきますのでご興味ある方はこちらから。
「夕焼けの街」「月面の夜」「四次元の旅」「海辺の茶の間」も舞台の上に自由に作り出すみたいな歌詞があるんですが、まああくまでイメージなんで、なんでもできるといえばできます。
夕焼けの街以外はみたことありませんけど。
そして海辺の茶の間ってなに?って気もしますが。
ちなみに、これまで自分がデザインを手がけたなかで一番難しかったオーダーは「火星の夕焼け」でした。
まあ、見たことないしね。
しかも調べたら火星の夕焼けって青いらしいんです。
どこから手に入れたのかわかりませんが、参考資料で写真もいただきましたが、確かに青かったことは覚えています。
でも、それそのまま再現してもお客さんに夕焼けってわかるのかなーとは思っていました。
別に、セリフとかで説明してるわけでもなかったし。
最終的には、別にお客さんにわからなくてもいいか、と開き直って青い明かりが思いっきり差し込んでくるようなシーンを作りました。
逆に、違和感を感じてもらえたらそれでいいのかなあとも。
だってそこは火星だから。
逆に、世の中の人はあまり見たことないけど自分的にはすごくよく知ってるシーンというのもありました。
「夜明け前の漁港」です。
帆船やヨットで旅をすることが多くて、漁港に泊まって夜を過ごすこともよくあります。
夜明け前に目が覚めしまったときに、自分の船のデッキから、まだ暗いうちから漁船が動く様子や夜がだんだん明けていく海を眺めるのが好きなんです。
ただ、よく知っている風景だからうまく表現できるのかというと必ずしもそんなことはなく。
演出家に「このシーン、暗すぎませんか」と言われてるのに、
「いや、現実の夜明け前の漁港はこんな雰囲気です」と言い張ったりとか。
別に、完全なリアルを求められてるわけじゃないのに。
実は「星の王子さま」の本番とほぼ同じ期間、友人で冒険家の石川仁さんがサハラ砂漠に行くツアーを企画していました。
ちなみにトップの写真は仁さんのfacebookから無断借用しています。
怒られたら消します。
石川 仁 (Jin Ishikawa) (@Jin_Ishikawa1) | Twitter
海なら割といろんなところを航海したことがあるのですが、砂漠は行ったことがなくて。
海と砂漠は似たところがある気がしています。
広くて、何もなくて、人間を拒んでいるようで、だから日常から遠く離れて。
それなのに時折、思いがけない優しい横顔を見せてくれて。
行けば絶対に砂漠を好きになると思っていたのですが、スケジュールが合わなくて断念。
でもいつか行ってみたいなあ。
見たことのない景色のなかに、自分を晒しに。