20歳くらいのころから舞台照明に関わってきて(最初はプロではなかったけど)、自分が一人前になったなと思ったのは40歳くらいだった。
もちろん、それまでも普通の仕事は頼まれていて、照明の仕事だけで十分生活してくことはできていた。
師匠や指導してくれる先輩がいない立場でずっと仕事を続けていた。
何をやるにもいわゆるカンがいいタイプではなく時間がかかる。
仕事が途切れないことだけがプロとしてやっていけることの証明で。
実際に仕事はずっと舞い込んできていたけど、自分の技術や判断に自信が持ちきれないままキャリアを重ねていた。
基本的に自己評価の低い人。
いつも周りと自分を引き比べて不安になる。
それはいまでも変わらない。
それでもこの歳になれば、舞台の仕事だけを続けていればそれほど思い悩むこともなかったのかもしれない。
重ねた時間は嘘をつかない。
しばらく舞台から離れていても、劇場に入れば体も頭も勝手に動いてくれる。
でも違う場所でも何かがしたいと思ってしまったから。
またいちからやり直し。
うまくできないことやわからないこともたくさんあって、周りの人がまぶしく見えてしまう。
20代の時と違っているのは、体力とか集中力とかそんなわかりやすいことだけではなくて、あのころのぼくは何もできなかっけどそれでも使ってくれた上の人たちがいたし、一緒に走ろうと誘ってくれる仲間もいた。
いまのぼくが一番手に入れにくいものはそういうものなのかもしれない。
それでもいまでもぼくに期待してくれる人もいるし、自分が前に進みたいのなら歩き続けるしかない。
自分がちっぽけなことを毎日思い知らされ続けても。