海と劇場、ときどき本棚

2018年の7月に爆誕した何をするのかを模索しつづける会社「ひとにまかせて」代表のブログです

カルチャーとデザイン

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慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)が2021年度からAO入試の割合を1.5倍に増やすそうです。
ふたつの学部でこれまで

一般:275人 AO:100人 だったのを、

一般:225人 AO:150人 に変更するさのこと。

これまでは4人にひとりだったのが、3人にひとり以上になりますね。

 

数年前に、当時少しだけ流行っていたソーシャルビジネスの講座に通っていました。

ソーシャルビジネスとは、社会問題をビジネスの手法も取り入れて、持続可能な形で解決する手段を創るという考え方です。

会社やNPOを立ち上げて活動している方のお話を伺ったり、事例を勉強したりしていたのですが、経営者のほとんどが東大か慶応SFC出身だったんですよね。

そして早稲田大学出身のひとがほとんどいない。

ぼくが大学に通っていたころの早稲田と慶応のイメージが完全に逆転していたのです。

こういう、ニッチで新しいアイデアにチャレンジするのって、早稲田出身者が多い印象だったんですが。

 

慶応大学と言っても実はこういう傾向が強いのはSFCだけ。

慶応大学出身者のなかには「SFCは慶応じゃない」と言う人もいたりします。

ちょっと古い2012年の記事で、そしてそれはまさにぼくがソーシャルビジネスを学んでいたタイミングでもあるのですが、慶応SFCが注目されている理由を書いたものがあります。

www.nikkei.com

この記事では、SFCの独特の雰囲気はAO入試などで「変な人」をある程度の人数取り続けていることに理由があるのではないかと述べられています。

なるほどなー。

というか、それまんまぼくがいた頃の早稲田の雰囲気みたいな気がします。

たまたま大学のなかでぼくがうろちょろしていた場所がそういうところだったのかもしれませんが、ちょっとわけのわからない人がたくさんいた、早稲田ってそういう大学でした。

そしてぼくもそんな校風にあこがれて早稲田を目指したのです。

早稲田大学には少し変わったひとたちが集まっていて、そのおかげで新しいものが生まれて、その雰囲気にあこがれたひとたちがやってきてまた新しいなにかをつくる。

そうやって自然発生的に、校風やカルチャーが何十年ものあいだ自然に受け継がれていたんです。

 

それと比べるとSFCはそうしたキャンパスに多様な学生が集まるようにデザインされていると言えるのかもしれません。

校風やカルチャーという自然に生まれたものではなくて、入試の制度や合格基準で、多様性が生まれる環境を意図的に作り出している。

それを3000人の学生が在籍するキャンパス全体で行うことは本当にすごいと思いますし、それで結果も出してきていることも尊敬します。

それに引き換え、最近の早稲田の経営側はだんだんとそういう自由で多様な校風を喜ばなくなってきているようにも感じられます。

 

早稲田大学には「無門の門」と言う言葉があります。

大学で学びたい人間を拒まないという開かれた大学の象徴と言われています。

他の大学にあるような門構えはありませんでした。

ぼくが通っていた頃にあった第二学生会館は(確か)9階建てだったのですがぼくの在学中は4階か5階までしか使用できませんでした。

建設当時、学生会館の自治権を巡って学生と当局の間で闘争があり、学生が上層階を占拠したりして内部が破損しているからということでした。

少し前のブログにも書きましたが、学生時代にぼくが入り浸っていた「大隈裏」は時空の狭間みたいな不思議な場所でした。 

blog.hitomakase.com

 

施設はどんどんとキレイになっていますが、ぼくが通っていた頃にあったそんな「隙間」や「軋み」みたいなものがどんどん大学からなくなってしまっている、そんな気がします。

無門の門は警備員が常駐していて夜になると閉じられます。

第二学生会館は取り壊されてとても立派な「大隈記念タワー」に生まれ変わりました。

「大隈裏」はまだ健在ですが、使用の規制はぼくたちの頃より厳しくなったようです。

 

大学の立場や考え方も理解できなくはありません。

そして時代の流れもあるのだと思います。

考えてみると、自然発生的に生まれたカルチャーを、システムをデザインすることで狙って作り上げたSFCのやり方もとても現代風だなと感じたりもします。

世の中が美しく、爽やかに、見通しよくなっていくことは、当たり前ですがすばらしいこと。

なんですけどね。